目次
変形性股関節症とは
▽股関節の形態
▽変形性股関節症の原因
▽変形性股関節症の進展様式
▽病期とレントゲン像の評価
▽増殖型と萎縮型
治療法
▽治療の原則
▽関節温存手術
人工関節手術とは
▽人工股関節置換術
▽低侵襲(ていしんしゅう)手術と早期回復について
小児の股関節疾患
[1] 先天性股関節脱臼
[2] 乳児化膿性股関節炎
[3] ペルテス病 大腿骨頭の骨端軟骨の障害
[4] 大腿骨頭すべり症
よくある質問
変形性股関節症とは
変形性股関節症とは何らかの原因により関節軟骨が障害を受け、痛み、関節可動域の低下、筋力低下などをきたす病気です。外傷により関節軟骨を直接傷つけたり、関節の形を破壊することによる外傷性の変形性股関節症や細菌感染により軟骨が傷害される化膿性関節炎後の股関節症などはその原因は明らかで、理解されやすいものと思われます。
しかし実際の変形性股関節症ではその多くが、先天性股関節脱臼後の骨頭変形や臼蓋形成不全といった解剖学的異常、または生まれながらに持っている骨格の特徴としての臼蓋形成不全がその原因のほとんどを占めます。ここでは日本人に多い臼蓋形成不全による二次性変形性股関節症の成り立ちを中心に解説したいと思います。
股関節の形態
寛骨臼(かんこつきゅう) |
股関節のその形態は球状の大腿骨頭と寛骨臼という窪み(ボールとソケット、球と臼)からなる関節で解剖学的には球関節と言われ、四肢においては人体で最も大きい関節です。
なぜ最大かと言えば、最も機械的ストレスが大きい故、神様がそのように創造したものと推測されます。大腿骨頭は大腿骨軸(骨幹部)と大腿骨頚部を介して連続しており、また大腿骨は全体として捻れを持っています。これにより、大腿骨頭は大腿骨軸に対し前内方に位置することとなります。
一方、寛骨臼は天蓋部分の臼蓋と内下方の臼底とに分けられます。寛骨臼側の軟骨面は臼底部を不連続とした馬蹄形を呈しており、多少のたわみをもって荷重に耐えられるような構造になっています。
日本人は臼蓋の形に特徴があり、寛骨臼全体が浅く、大腿骨頭を十分に覆い隠すまでの大きさのない人が少なくありません。なかには後方の壁が非常に小さく、寛骨臼全体が後ろを向いている(通常は前方を向いている)方もいらっしゃいます(後ろ開きタイプの寛骨臼)。特に先天性股関節脱臼の既往のある患者さんでは後壁が小さい場合がよくあります。
変形性股関節症の原因
原因を大きく大別すると、主に加齢、退行変性を原因とする一次性変形性股関節症と他に明らかな原因のある二次性変形性股関節症とに分けられます。はじめに述べましたように様々な二次性変形性股関節症の中でも臼蓋形成不全を中心とした形態異常を原因とするものが大半を占めます(先天性股関節脱臼の既往の有無を問わず)。
30代女性:先天性股関節脱臼の既往あり。左は著名な骨頭の変形と臼蓋形成不全を認める。右側も臼蓋形成不全を呈している。 | 20代女性:先天性股関節脱臼の既往なし。左側に臼蓋形成不全(前関節症)を認める。 |