目次
変形性股関節症とは
▽股関節の形態
▽変形性股関節症の原因
▽変形性股関節症の進展様式
▽病期とレントゲン像の評価
▽増殖型と萎縮型
治療法
▽治療の原則
▽関節温存手術
人工関節手術とは
▽人工股関節置換術
▽低侵襲(ていしんしゅう)手術と早期回復について
小児の股関節疾患
[1] 先天性股関節脱臼
[2] 乳児化膿性股関節炎
[3] ペルテス病 大腿骨頭の骨端軟骨の障害
[4] 大腿骨頭すべり症
よくある質問
小児の股関節疾患(続き)
[3] ペルテス病 大腿骨頭の骨端軟骨の障害
ペルテス病 |
6〜7歳頃に多くみられる病気です。股関節痛を訴えることもありますが膝の痛みを訴えることも多く、また痛みはさほどなく跛行、足を引きずるといった症状のこともあります。障害を受けた大腿骨頭を鋳型となる寛骨臼の奥に向き合わせることで修復を促す装具療法が一般的です(containment療法)。装具は1年から1年半程度必要となるため、就学への影響、いじめや不登校などの問題が懸念されます。
最近ではより確実なcontainmentを獲得するために大腿骨内反骨切り術が選択されることが推奨されています。この手術により確実な修復が得られると同時に治療期間が短縮することも期待されます。適切な治療により多くはほぼ球形に近い骨頭に修復されますが、全く正常の形態となることはむしろ少ないと考えられます。骨頭変形や骨頭肥大が遺残すると大腿骨頭の受皿である寛骨臼との間に不適合が生じ、将来変形性股関節症を発症することになります。このため骨頭変形をいかに生じさせないかがペルテス病の治療の目的となります。
したがって変形の生じやすい年長児発症の場合や骨頭の障害範囲の広いものでは受け皿である骨盤側の骨切り術を加えることもあります。変形性股関節症の発症年齢は骨頭変形の程度により異なりますが、30歳頃より痛みを訴える方が散見されるようです。ペルテス病自体が男性に多く、筋力に守られるため、すぐに人工関節手術などが必要になることは少ないのですが、働き盛りの時期の股関節痛は社会的影響が大きいとも言えます。高齢化社会でもあり、より精度の高いペルテス病の治療をして骨頭変形を最小限にする必要があります。
[4] 大腿骨頭すべり症
大腿骨頭の骨端線(成長軟骨板)の部分ですべり(ずれ)が生じる病気で10歳〜16歳に多く認められます。骨端線は成長と伴に徐々に閉鎖し大腿骨(頭)は一塊の骨となります。成長過程では徐々に骨端線の強度は増しますが、これと同時に体重の増加や運動量の増大があり、骨端線への機械的ストレスがその強度を上回ればそこにすべりが生じると考えられます。したがって患児には肥満を合併することが多く、時に骨端線の閉鎖を遅らせるホルモンのアンバランスが基盤に存在することがあります。この病気の進展様式は3タイプあり、
- 正常の位置関係にあったものが急激にずれる、
- ゆっくりしたペースで徐々にずれる、
- ゆっくりずれる経過をとっていたものが急に進行する
に分類されます。1.や 3.では痛みが強く歩行困難を認めることもありますが 2.では歩いて医療機関を受診することがほとんどで、お話をよく聞くと数か月前から時々股関節痛があるといったことがよくあります。
治療法は病型やすべりの程度、ホルモン異常の有無により異なります。すべりの程度の軽いものはこれ以上のすべりを予防する目的で骨端線をスクリューで固定します。すべりの程度の大きいものでは大腿骨の骨切り術によりずれてしまった大腿骨頭の荷重部を元の方向へ向かせます。また急激にすべったものには麻酔下に徒手整復を試みることがあります。やはり将来の変形性股関節症への進展を予防することが重要です。原因の明らかでない成人の変形性股関節症患者さんの中には大腿骨頭が茄子のおしりのような形態をしていて(外側のくびれがない)、明らかに臼蓋の曲率半径を上回っており、骨頭-臼蓋の不適合を示す方が散見されます。成長期に慢性経過型の大腿骨頭すべり症があったものと推測されます。こういった場合のように、軽度な慢性型を含めるとその発症頻度は決して少なくないものと思われます。